アンタークチサイトを作った(その2)
はじめに
前回の記事では、アンタークチサイトの作り方を紹介し、実際に実験してみました。
その結果、冷やして固めるだけでアンタークちんを作れることがわかりました。
しかし、人とは欲深いもので、もっときれいな結晶が欲しい!
ということで、追加で実験をやってみたところ、できました。
まずはその写真をお見せします。
あーいい。最高。
超萌える。
写真を取るのが下手くそできれいに見えていないのが非常に悔しいのですが、実物はこれよりももっとずっと素晴らしくきれいです。
一つ一つの外形が肉眼ではっきりわかるまで大きく成長した結晶!
-20℃保持では見えなかった針状結晶断面の六角形まではっきり見えています。
では、このマーベラスなアンタークちんをどうやって作ったのかを説明していきたいと思います。
過冷却はなぜ起きる?
過冷却は比較的よく知られた物理現象だと思います。
しかし、なぜ起きるのか? と聞かれて答えられる人は少ないのではないでしょうか。
過冷却においてキーとなるのは、核形成という現象です。
温度変化などによって新しい相(この場合は固体のアンタークチサイト)が生じる際、まず小さな結晶が先に生まれます。
この小さな結晶が核(結晶核)であり、これが大きくなっていくことによって結晶化は進行します。
結晶成長、千里の道も一歩から、その第一歩が核形成というわけです。
そして、過冷却という現象は、この核形成が非常に起きにくい際に生じます。
核形成が起きにくい場合は、凝固温度を下回っても相の転移(液体⇒固体)がなかなか生じません。
そんななか、何かの衝撃で1つでも結晶核が生まれれば、それを種にして相転移が一気に進行します。
では、アンタークチサイトの過冷却を解消するにはどうすればいいか?
衝撃では効かない、深い過冷却です。
そこで、もっと直接的な手段、つまり、すでに凝固したアンタークチサイトを結晶核として入れてみることにしました。
目覚めよアンタークちん
アンタークちんの核には、冷凍庫で作った微結晶を用いることにします。
左上の核を、質量濃度49%のCaCl2溶液に入れてみました。
その時の様子を動画でとったので、下に載せます。
ああ~~~~~(恍惚)
めっちゃ萌える。最高。大好き。
(不要と思いますが)一応説明します。
過冷却状態のアンタークちん溶液に結晶核を落とすと、核はゆっくりと沈みながら大きくなっていきます。核が底についてからは、容器の下から針状の結晶が放射状に広がっていく様子がわかります。
これは予想外にいい結果です。
素晴らしい!
濃度による結晶の量の違い
上の実験は、濃度50, 49, 48%のアンタークちん溶液で行いました。
結晶化が落ち着いた後の写真を下に示します。
50%では全体が、49%と48%ではそれぞれ全体の8割、および5割が結晶化している様子がわかります。
結晶化速度も濃度によって異なり、50℃は一瞬で、48℃では何分もかけてゆっくりと結晶化していきました。
CaCl2濃度が低いほどアンタークチサイトの結晶化する量は少なくなるので、定性的には予想と一致しています。
アンタークチサイトの結晶化を観察したいときには、ぴったりの組成ではなく~49%程度、わずかに水が多くなるように調節してやると良いみたいですね。
まとめ
というわけで、以上、アンタークちんの結晶化実験でした。
休日の暇つぶし実験でしたが、思いのほかいい結果が出て面白く、気づけば一日中アンタークちんにかかりっきりでした。
材料も簡単に手に入るし、操作は非常に簡単、塩化カルシウムは特に危険な物質ではなく、いったん溶液を作れば、湯せんして溶かして再利用できる。
これはなかなか素晴らしい方法を見つけてしまったのでは?
と自画自賛ですが、本当にアンタークチサイトであるかどうかは解析してみなければわかりません。CaCl2には他の水和物も存在するからです。
(だれか構造解析して♪)
それはともかく、やっぱりこれはいい実験ですよ!
重ねて言いますが、実物は写真や動画よりもずっときれいに見えます!
自分なんて語彙が消失してしばらく「すげえ」「やばい」しか言えなかったし。
皆さんもぜひ実験してみてくださいね!
質問があればお気軽にどうぞ。
それでは。