フォスフォフィライトを作ってみる(合成編)
はじめに
アニメ宝石の国を見ました
フォスフォフィライトちゃんかわいいよおおおおおおお
でも高い・・・
1ctで100万超って・・・
でも欲しい・・・
というわけでフォスフォフィライトちゃんを作る方法を調べました
フォスフォフィライトちゃんって?
困ったときはwikipediaさんに聞いてみよう!
名前:フォスフォフィライト(燐葉石)
化学式:Zn2Fe(PO4)2・4H2O
へき開:完全
モース硬度:3 ~ 3.5
性質・特徴:非常に脆く衝撃に弱い
産地:ボリビア (セロ・リコ銀山,ポトシ)、その他オーストラリア、アメリカ、ドイツ、ザンビア
以上です。
ちょっと情報少なすぎるんちゃう?
ちなみに英語版も同じような感じでした。よっぽど使い道がないんだなこいつ(かわいい)。
「宝石の国」中での扱いもまさに原作通り。
とはいえこの程度で終わるわけにはいきません。何せ目標はこいつの人工合成。
というわけでとりあえず論文調べましょ。
フォスフォフィライトちゃん大調査
Web of Science(論文の検索サイト)でPhosphophylliteと検索してみた結果がこちら。
(少なくて)いいじゃん。
調査の手間が省けそう・・・あれ?
合成、構造、熱特性・・・まさか。
とりあえず概要を見てみましょう。
でもまさかそんなすぐに合成方法が見つかるわけなんk
あああああああああああああ見つかったあああああ!!!!
ということで調査はこれで終了ですね。
お疲れ様でした。
フォスフォフィライトちゃん大活躍
先の論文概要を改めて見てみましょう。
Phosphophyllite, an important material in the coating of steels for rust prevention, has been synthesized in bulk from aqueous solution.
斜体部分にご注目。
なんかごく当然のように「(フォスフォフィライトは)鋼鉄のさび止めコーティング剤として非常に重要な材料である」とか書かれてますが知らないよ!
どうやらフォスフォフィライトちゃんは与り知らぬところで世界のお役に立っている様子。
フォスフォフィライトちゃんは役に立たないニートではなかった!(でもかわいい)
とあればフォスフォフィライトちゃんファンクラブの末席を汚すものとしてこれを調査しないでいられるだろうか(反語)
まあ記事としては脱線するので、改めて書くことにします。
とにかく合成方法だ! 合成方法を早く教えてくれ!
フォスフォフィライトちゃん大合成
(参考文献 Synthesis, Structure and Thermal Properties of Phosphophyllite, Zn2Fe(PO4)2・4H2O, I. M. Thomas, M. T. Weller, J. Mater. Chem., 1992, 2(11), 1123-1126.)
<材料>
・リン酸二アンモニウム溶液(0.5 mol/L, 30cm3)
・硫酸亜鉛および硫酸鉄の混合水溶液(総金属イオン濃度 0.5 mol/L, 70cm3)
<作り方>
・混ぜるだけ。
以上です。
やばい。ちょー簡単すぎてやばい。
正確な工程は以下。
- 2種の溶液を4時間混合する。
- ガラスろ過機で析出物を採取する。
- 析出物を1 dm3の水で洗浄し、余分な硫酸を取り除く。
- 空気中、60℃の環境で乾燥させる。
ほんとに論文のまんまですよこれ。簡単すぎでしょ。
弱酸(硫酸鉄・硫酸亜鉛)と弱塩基(リン酸二アンモニウム)の中和反応で生じる塩がフォスフォフィライトちゃんになるといった解釈でいいでしょう。
最後に水で洗浄しているということは、常温の水に対する溶解度はほぼゼロといったところでしょうか。
この反応で得られるフォスフォフィライトちゃんは粉末と言っていいほど小さな微結晶なので、宝石として生まれ変わらせるためにはもうひと手間かける必要がありそうですね。
手間のかかるやつだぜ。(かわいい)
フォスフォフィライトちゃん大成長
上記の方法によって、我々はフォスフォフィライトちゃん(粉末)を手に入れることができるようになりました。
これを前駆体として、下のようなフォスフォフィライトちゃん(単結晶)を作らないといけない。
このような、原料から単結晶を作る方法は結晶成長(Crystal Growth)と呼ばれます。
結晶成長の基礎については
具体的な成長プロセスの設計については
などがおすすめ。
英語が読めるならHandbook of Crystal GrowthやCrystal Growth for Beginnersとかもいいぞ。
基本的には、昇華するなら気相成長、液体になるなら融液成長、ならないで水に溶けるなら溶液成長(水溶液)、水に溶けないなら溶液成長(フラックス)あるいは高温高圧下の水を溶媒にする熱水合成での単結晶合成を目指すといった感じでしょうか。
フォスフォフィライトちゃんは常温常圧の水には溶けないようなので、工夫が必要になりそうですね。
フォスフォフィライトちゃんは2話で巨大カタツムリに食べられ(?)てどろどろに溶かされてしまいましたが、まさにその溶解液を探す必要があるわけです。
というわけで次回! フォスフォフィライトを作ってみる(結晶成長編)
乞うご期待!